医療の安全を支える臨床工学技士
臨床工学技士について
臨床工学技士は1987年5月に制定された「臨床工学技士法※」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格です。
※公布 昭和62年6月2日、施工 昭和63年4月1日
医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う事を業とする医療機器の専門医療職種です。現在の医療に不可欠な医療機器のスペシャリストとして、今後益々増大する医療機器の安全確保と有効性維持をチーム医療の一員として生命維持をサポートしています。

当院MEセンターには救急総合診療部部長が兼任でMEセンター長として臨床工学技士が13名在籍し、365日24時間体制で急性期医療に従事しています。
また、医療機器は中央管理されており、使用前点検、定期点検、保守点検を実施することで、医療機器を安全に使用できる環境を整えています。
臨床業務は医療機器中央管理、手術室業務、体外循環業務、集中治療室業務、血管造影室業務、血液浄化業務、高気圧酸素治療業務と多岐に渡り生命維持管理装置の操作に従事しています。
業務について
医療機器中央管理・集中治療室業務

当院のMEセンターでは輸液ポンプ、シリンジポンプ、人工呼吸器、生体情報モニタなど1,700台以上の様々な医療機器を管理システムにて中央管理しています。
使用後の機器は専用の校正機器を使用して精度管理しており、常に安全に使用できる体制になっています。
機器管理
MEセンターより貸し出した機器は、各病棟で使用後にMEセンターに返却されます。
MEセンターで清拭し不具合がないかなどの日常点検を行い、次の患者さんに使用できる状態にしています。また、細部のメンテナンスや校正機器を使用した定期点検を行う事で機器のトラブルを未然に起きないようにしています。

病棟ラウンド
病棟で稼働中の人工呼吸器をはじめとする様々な使用中の機器に動作不良などがないかを毎日チェックしています。医療機器の故障や動作不良が疑われる場合の問い合わせにもすぐに対応し、修理が可能な機器は修理を行い、メーカーでの対応が必要な場合はメーカーとの対応を行っています。

集中治療室
集中治療室では人工呼吸器、血液浄化装置、IABP、ECMO、Impellaなど多くの生命維持管理装置が動いており、臨床工学技士は様々な機器に関わり対応を行っています。近年では医師の事前指示による人工呼吸器の離脱プロトコルを用いて、医師、看護師と共に患者さんの人工呼吸器早期離脱にも専門チームとして参加しています。
手術室・体外循環業務

当院の手術室は10部屋あり、外科・整形外科・心臓血管外科など様々な科の手術が日々行われています。ハイブリット手術室も1部屋あり、胸部・腹部ステントグラフトなどの治療を行っており、今後はTAVIやMitraClipも行っていく予定です。
手術室でのME業務は、機器管理、人工心肺の操作、ロボット手術の準備、神経刺激装置の操作、自己血回収装置の操作などを行います。
人工心肺
当院心臓血管外科ではMICS(小切開手術)で行う手術を積極的に行っており、閉鎖式の人工心肺回路を用いたMICS手術が行えるのは全国でも限られた施設となっています。
また、緊急手術対応の為にオンコール体制をとっており、担当者が2名呼ばれ、24時間365日緊急手術に対応しています。

自己血回収装置、神経刺激装置
当院では出血が多く見込まれる患者さんの血液を専用の機械を使用して回収、洗浄、返血の工程で自身の血液を返す事で輸血を少なくしています。また、整形外科や脳神経外科では手術中に手足が動くかなどの確認を行う神経刺激装置を使用して安全に手術を行っています。これらの装置を臨床工学技士が操作しています。

手術室機器管理
手術室内には手術に使用する麻酔器、電気メス、シリンジポンプなど様々な機器があり、日常点検から定期点検まで安全に関わる内容はMEの業務の一環です。手術で使用中の様々な機器のトラブル対応もMEとして関われる範囲で対応しています。
植込みデバイス管理業務
当院では不整脈領域の一環として植込みデバイスの管理も行っています。ペースメーカを始めCRTD・ICD・SICD・ループレコーダなど多岐に渡る機器の治療に携っています。ペースメーカの植込み時やその後の外来対応、遠隔モニタリングでの管理等も行っています。また、MRI撮像や放射線治療、手術時の設定変更などにも対応しています。
血管造影室業務

当院の血管造影室はハイブリッド室を含め3部屋設けられております。心血管、脳血管、末梢血管、小児カテーテル、不整脈アブレーション、不整脈デバイス植込みなど様々なカテーテル治療が幅広く行われています。今年度はSHDの治療への参画予定もあります。
血管内治療
MEの業務は、患者さんの入退室対応、ポリグラフ(心電図・心内圧の測定)、画像診断装置(IVUS:血管内超音波・OCT:光干渉断層撮影装置)FFRの操作・記録を行っています。緊急時・重症症例時には、IABP、ECMO、Impellaの準備・操作・接続に携わっています。また、これらの治療・検査を行う際の物品の提案と物出し、接続を行っております。

不整脈アブレーション治療
操作と測定、記録を主に行っています。また、治療に使用する機器の接続やプライミング、物品出しも行っています。
血液浄化業務

当院の血液浄化業務は血液浄化室で行う慢性期領域とICUやHCUで行う急性期領域があります。血液透析はもちろんのこと血漿交換などのアフェレーシスを含む多種多様な治療を行っています。
血液浄化室業務
血液浄化室は20床ありMEの業務は水質の管理はもちろんのこと、シャント穿刺、透析開始時・終了時の介助などを行っています。また、透析装置のメンテナンスは装置内の密閉テストや除水ポンプの実測テストなどの点検を定期的に行い、装置内部品はMEがメンテナンス時に交換しています。

アフェレーシスと急性期の血液浄化
当院では免疫系疾患に対する血漿交換療法(PE)や難治性腹水症に対するCART、潰瘍性大腸炎への治療として行われるGCAPなど多岐にわたるアフェレーシス療法を行っています。また、ICU・HCUでは緊急透析や手術後の持続的血液濾過透析(CHDF)も行っています。
高気圧酸素治療業務

当院の高気圧酸素治療は1人用の第1種高気圧酸素治療装置を使用して治療を行っています。横須賀市では当院でしか治療を行っておらず突発性難聴や網膜動脈閉塞症、急性一酸化炭素中毒の治療など様々な治療を行っています。
安全への取り組み
当院は高気圧酸素治療専門医と高気圧酸素治療認定技士が在籍しており、学会の認定する治療施設として安全に配慮し年間1200例の治療を行っております。また、年に1回の緊急時に対応する訓練を行い、スタッフ一同安全への意識を高めています。
資格取得
自己研鑽
当院の臨床工学技士は機器管理をはじめ、透析、血管造影、体外循環、高気圧酸素治療、ペースメーカなど様々な業務にチームとして関わっており、日々高度化していく医療を支えるべく情報収集や勉学に力を入れています。一人一人が努力している結果、資格を取得し更新していく事で知識のアップデートを継続しております。
保有資格 | 人数 |
呼吸治療関連専門臨床工学技士 | 1名 |
血液浄化関連専門臨床工学技士 | 1名 |
不整脈治療専門認定士 | 1名 |
臨床ME専門認定士 | 1名 |
3学会合同呼吸療法認定士 | 7名 |
体外循環技術認定士 | 4名 |
透析技術認定士 | 4名 |
高気圧酸素治療認定士 | 1名 |
高気圧酸素治療装置操作技士認定 | 1名 |
心血管インターベンション技術認定士 | 2名 |
CDR認定 | 2名 |
心電図検定1級 | 1名 |
心電図検定2級 | 2名 |
第1種ME実力検定 | 1名 |
臨床工学技士臨床実習指導者 | 1名 |
臨床検査技師 | 3名 |