循環器内科について

循環器内科では、急性期医療から慢性期心臓リハビリテーションまで、幅広い診療を包括的に提供しています。
急性期医療においては、心筋梗塞や不安定狭心症、急性心不全などの緊急疾患に24時間体制で対応しており、ドクターカーによる医師の出動も可能です。
また、2022年からは重症心不全や心原性ショックに対するImpellaを導入し、2025年からは弁膜症に対するカテーテル治療であるTAVIおよびMitraClipを三浦半島で唯一、施設認可を受けて行います。

当科は心臓血管外科との連携が非常に密接で、循環器疾患の入院カンファレンスや心臓血管外科カンファレンス、ハートチームカンファレンスを週に3回合同で実施しています。これらのカンファレンスを通じて、診療科の垣根を越えて患者さんにとっての最善の治療(Best practice)を追求し、ワンチームとして取り組んでいます。
さらに、ICUや脳神経外科、腎臓内科などの他科とも緊密に連携し、迅速な治療を行っています。
慢性期には、心大血管疾患や慢性心不全に特化したリハビリテーションプログラムを提供し、心臓リハビリテーションハイキングや市民公開講座を通じて、患者さんの生活の質を向上させるとともに、患者さんを支えるご家族にも安心できる環境を提供することを目指しています。
2004年に設立されたバスキュラーラボ、2011年に開始した心不全外来、肺高血圧外来、2024年に始まった心臓弁膜症専門外来などを通じて、慢性心不全、心臓弁膜症、全身の動脈硬化性疾患への対応を強化しています。
私たちは診療連携を重視し、さまざまな循環器疾患に対する広範な治療体制を整え、地域に密着した質の高い医療を提供することに努めています。
対象疾患と治療法
どんな病気?
心臓の表面には心臓の筋肉(心筋)に血液を送る血管である冠動脈があり、冠動脈の動脈硬化(血管の老化現象)が進行すると血管が狭くなりその先の心筋に十分な血液を送ることができなくなります。このように心臓の血流が悪くなり心臓そのものが血液不足に陥った状態を虚血性心疾患と言い、その代表的のものに狭心症があります。

症状
胸の痛みや締め付けられるような圧迫感。主に胸の中央部から胸全体にかけての圧迫感、絞扼感、重圧感など。時に背中や腕、首、顎に痛みが広がることがあります。息苦しさ、冷や汗、吐き気などを伴うこともあります。
検査
心電図、採血、胸部レントゲン、心臓超音波、冠動脈CT(注1)、FFRCT(注2)、冠動脈造影(注3)といった心臓カテーテル検査
(注1)冠動脈CT
造影剤を使用して冠動脈に狭い場所がないかを確認する検査です。入院の必要はなく、外来で施行できます。この検査で冠動脈狭窄がないと判定された方は、入院して行う冠動脈造影を受けなくてもよい場合が多く、冠動脈疾患の危険因子(糖尿病、高血圧、脂質異常、喫煙など)を抱えた患者さんで、循環器病を疑う症状のある方にとっては、まず考慮される非常に有用な検査になっています。
冠動脈CT施行の前には心拍数を低下させる薬を内服し、撮影中に10秒前後は息を止めていただく必要があります。とても有用な検査ではありますが、以下の方は、主治医とよく相談いただく必要があります。
(1)腎臓の機能が著しく低下した方
(2)造影剤にアレルギー歴のある方
(3) 心不全が急激に増悪している方です。
心臓CTを外来で施行して、有意な(放置できない)狭窄が疑われる方、冠動脈に石灰化が著しい方は、最終判定のため、冠動脈造影を受けて頂くことがあります(図1)。
(図1) 冠動脈はプラークにより狭く(狭窄に)なっている。


(注2) FFRCT
「FFRCT」という検査は、上記のような心臓CT画像を使って、スーパーコンピューターで冠動脈(心臓の血管)の血流状態を解析する方法です。従来の心臓CTは、血管の狭さは確認できても、血流が十分かどうか(心筋虚血)の評価はできませんでした。そのため、狭窄が見つかった場合は、追加の検査が必要でした。
FFRCTを使うと、心臓CTの画像だけで血流の状態も調べられるようになり、追加の検査が不要になることがあります。もしCTで狭窄(狭いところ)が見つかっても、この検査で 血流に問題がないと分かれば、治療(カテーテルによる風船やステントを使う治療やバイパス手術)が必要ない場合も多く、冠動脈造影といったカテーテル検査も受ける必要もありません。この技術により、患者さんの負担を減らしながら、冠動脈の病気をより正確に調べることが可能になります。
(図2)FFRCT :0.75以下は有意な心筋虚血として冠動脈造影と血行再建術の適応の検討が必要となります。

(注3) 冠動脈造影(CAG)とは?
冠動脈造影検査(図3)とは、細い管(カテーテル)を使って造影剤というお薬を冠動脈に流し込み、血管の状態を調べるための検査です。カテーテルを手首や太ももの付け根または腕の動脈という血管から挿入し、冠動脈の入り口まで進め、造影剤を流し込みながらX線撮影をします。血管が狭くなったり詰まったりしていないかを詳しく調べることができます。狭窄の程度に応じ、その狭窄により本当に心臓の血流が障害されているかを調べるために冠血流予備比(FFR)や冠血流予備能(CFR)等を追加することもあります。
(図3) 右冠動脈造影 2か所に狭窄を認める

治療
お薬で胸の痛みを和らげる治療(薬物療法)、カテーテルを使用した経皮的冠動脈インターベンション(注4)、冠動脈バイパス手術の3本柱が治療の中心になります。
(注4)経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
狭心症や急性心筋梗塞に対する代表的な治療の一つです。中でも冠動脈が急に閉塞し心筋が壊死し心臓に不可逆的なダメージが加わる急性心筋梗塞に対する緊急でのPCIは治療の第一選択となります。手首や太ももの付け根の動脈から挿入された細い管(カテーテル)を通し、冠動脈の狭くなったり詰まっている所を広げることでスムーズな血流を取り戻します。風船(バルーン)を血管の内側から膨らませて血管を押し広げたり、薬剤溶出ステント(注5)という金属の網目状の筒を留置し血管を内側から補強します。治療に際しては造影検査だけでなく、血管内超音波検査(IVUS)や光干渉断層法(OCT/OFDI, 図4)と呼ばれる血管の内側から血管の性状をさらに詳細に評価するための道具も用いて、より安全に、より効果的な治療を行っております。ステントを使用せず、特殊な薬剤をコーティングしてある薬剤塗布バルーン(注5)を使用することもあります。石灰化がひどく血管が広がらない時には特殊カテーテル(注6)といわれる、ロータブレーターやダイアモンドバック360というドリルのような道具や、ショックウエーブ等の特殊カテーテルを併用することもあります。
(図4)光鑑賞断層法(OCT): 血管内の狭さやプラークや石灰化の状況を把握し、冠動脈ステントの拡がりや圧着を確かめて確実なカテーテル治療の助けとなるカテーテルです。

(注5) 薬剤溶出性ステントと薬剤溶出性バルーン
PCIが世に出た当初はバルーンによる拡張しか選択肢がありませんでしたが、それだけだと急性冠動脈閉塞や再狭窄(数か月後に再び血管が狭くなること)が多くみられました。それらを予防するためにステントが開発され、現在ではさらに再狭窄抑制効果が高い薬剤溶出性ステント(DES)が使用されています。また、バルーンの表面に再狭窄を予防するための薬剤を塗布した薬剤溶出性バルーン(DCB)も開発され使用されております。
(注6) 特殊カテーテル
動脈硬化が進行すると血管の内側にコレステロールを中心とする柔らかい粥腫だけでなく粥腫の中や血管にカルシウムが沈着し石のように硬くなることがあり、通常のバルーンでは血管が広がらず治療が困難になります。そのような血管には石灰化を削り飛ばすためのドリルの付いた特殊なカテーテル(ダイアモンドバック360(図5),ロータブレーター)や衝撃波で石灰化を砕く特殊なカテーテル(ショックウェーブ)が用いられることがあります。
(図5)アテローム切除アブレーション式血管形成術用カテーテル(ダイアモンドバック360)

どんな病気?
急性心筋梗塞は、心臓の筋肉を養っている血管(冠動脈)が詰まり、心臓に十分な酸素が届かなくなり、心臓の筋肉がダメージを受けてしまう病気です。
狭心症と違い、血流が完全に止まるため、時間が経つほど心筋が障害を受けます。日本では心筋梗塞は死亡原因の第2位であり、病院へたどり着けて治療を受けた方でも、5〜10%の方が助からない病気です。また、退院後も心不全や不整脈などの後遺症が残ることがあります。

症状
- 胸の中央から全体、背中にかけて締め付けられるような圧迫感
- 安静にしても症状がおさまらない
- 腕や肩、首に痛み、歯が浮くような感覚や手へのしびれがひろがったりする
- 冷や汗を伴う事が多く、呼吸困難感や吐き気を催す事がある
- 高齢の方や糖尿病があるとはっきりとした症状を示さない事がある

検査
心電図、採血、胸部レントゲン、心臓超音波、冠動脈CT、冠動脈造影といった心臓カテーテル検査
治療
冠動脈インターベンションが治療の主流になります。心筋梗塞では、できるだけ早く治療を開始することがとても重要です。
当院では三浦半島を中心とした近隣地域の緊急患者を24時間365日受け入れ、病院到着後すぐに診断を行い、緊急カテーテル検査や治療(冠動脈インターベンションまたはバイパス手術)を実施しています。
カテーテル治療である冠動脈インターベンションを急性心筋梗塞に対して最初に行うことを、プライマリーPCIといい、より多くの場合は、閉塞した冠動脈を再開通させることが可能です(図)。

冠動脈造影:血栓により閉塞している

プライマリーPCI後:冠動脈ステントを留置することで、良好な血流の再開に成功している
しかし一度壊死した心筋は原則、再生能力はなく、元には戻りません。
そのため、少しでも早く血流を改善し、心筋の壊死をできるだけ抑えることと、ダメージを受けた心臓が回復するまで集中治療によりサポートしなければなりません。
当院では24時間体制でスタッフが待機し、必要に応じて救急外来から直接カテーテル室に移動するなど、迅速な対応に努めています。
補助循環装置
心臓は絶えず拍動し全身に血液を介し酸素と栄養を送るポンプの役割を担っている重要な臓器です。
急性心筋梗塞や劇症型心筋炎などにより心臓が傷害されポンプ機能が損なわれることで全身の循環が保てなくなった状態を心原性ショックと言います。
心原性ショックにより低下してしまった心臓のポンプ機能を補うための機械が循環補助装置(MCS)であり、大動脈内バルーンポンピング(IABP)(注1)、ECMO(エクモ)(注2)、循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(Impella)(注3) の3つが使用され、心臓の機能が回復するまでICUで治療することがあります。
(注1)大動脈内バルーンポンピング(IABP)
バルーン(30mlから40ml)が先端に付いたカテーテルを太ももの付け根や肘の動脈から挿入し心臓の動きに合わせてバルーンを拡張・収縮させることで心臓の働きを助けます。自身の心臓のおよそ10%から20%程度の循環補助が可能と言われています。
(注2) ECMO(エクモ)
Extracorporeal membrane oxygenationの略で膜型人工肺と遠心ポンプにより呼吸と循環の補助を強力に行う装置。緊急時にも挿入可能であり、循環だけでなく呼吸の補助もできます。IABPでは太刀打ちできないような重度の急性循環不全に対しても循環補助が可能です。
(注3) 循環補助用心内留置型ポンプカテーテル(Impella、インペラ)
比較的近年に本邦に導入された補助循環装置です。ImpellaCP、Impella5.5と二種類あり、必要とされる補助循環量に応じて使い分けます。太ももの付け根の動脈から左心室内に直接カテーテル型の軸流ポンプを挿入し血液を送り出すことで循環を補助します。心筋を保護する効果も報告されており、心原性ショックに対する治療として期待されています。
どんな病気?
心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です。急性心不全と慢性心不全がありますがここでは慢性心不全についてお話しいたします。
原因は①高血圧、②冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)、③弁膜症、④心筋障害(心筋症、心筋炎など)、⑤先天性心疾患(心房中隔欠損症や心室中隔欠損症など)、⑥不整脈(心房細動など)、⑦内分泌疾患(甲状腺機能亢進症など)、その他様々な原因があります。
リスク要因は、喫煙、過度な飲酒、肥満、運動不足、ストレスなどです。
図は慢性心不全の経過を示したものですが、実は症状が出現した時にはステージCという状態で、このあとは元の心機能を取り戻すことはなく徐々に心機能が低下していくことを示しています。

症状
- 息切れ
- 動悸(脈が速く打つまたは乱れる)
- めまい
- むくみ
- 倦怠感
- 食欲不振
- 横になって眠れない起坐呼吸

検査
経皮的酸素飽和度測定、胸部レントゲン、心電図、心エコー検査、血液検査(BNP/NT-proBNPなど)、冠動脈CT、造影MRI、心筋シンチグラフィー、心臓カテーテル検査 等
治療
薬物療法(注1)、ペースメーカーによる心室再同期療法(注2)、補助循環(注3)、手術やカテーテルを用いた治療、心臓リハビリテーション(注4)などがあります。
心不全の原因が虚血性心疾患(狭心症など)の場合、カテーテル治療(狭心症の頁参照)や心臓バイパス術が行なわれます。弁膜症の場合には従来は手術による治療が主に行われていましたが、近年では大動脈弁に対するカテーテル治療(TAVI)、僧帽弁に対するクリップ治療(マトラクリップ)なども行われるようになりました。
不整脈の場合、カテーテルアブレーション治療、ペースメーカーなどの治療が行われます。
また、拡張型心筋症などの重症心不全に合併する左脚ブロック場合、心室再同期療法(両室ペーシング療法)(注2)が行われることがあります。
(注1) 薬剤療法
降圧薬、利尿剤、その他心臓の働きを助ける薬があります。慢性心不全の急性増悪の時には注射で用いられることもあります。
ACE阻害薬/ARB/ARNI (アーニー)
レニン-アンギオテンシン系を阻害することで血圧を下げ、心筋や腎臓を保護する働きがあります。
ベータ遮断薬
交感神経からの過剰な心臓への刺激を遮断することで心筋を保護する作用があります。
SGLT2阻害薬: 元々は糖尿病の薬として開発されましたが近年心不全に効果があることがわかり、現在では標準的治療薬の一つとされています。
アルドステロン受容体拮抗薬
アルドステロンの働きを阻害することで利尿作用などがあります。
上に述べた4種類の薬剤は現在心不全の標準治療薬として推奨されています(ファンタスティック フォーと言われています)。その他様々な薬剤が用いられています。
(注2) 心臓再同期療法:CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)
心臓再同期療法は、収縮力が低下した慢性心不全に対してのペースメーカーを使用した治療の一つです。
広範な陳旧性心筋梗塞、虚血性心臓病や拡張型心筋症の中には、高度に心機能が低下して薬物療法のみでは治療が困難な方がおられます。その中に、左右の心室の収縮のタイミングのずれがあることで心不全が改善しない方もいます。このような場合、左右の心室にペーシングリードを挿入し、微弱な電気刺激を心臓の左右両方の心室に送り、収縮のタイミングのずれを補正し、心臓のポンプ機能を改善させる治療(再同期治療)で心不全が改善する方がおられます。現在の心不全治療薬で心室収縮の同期不全を解消するものは存在せず、本治療法は重症心不全に対する治療として期待されています。日本では2004年に保険適応となっています。また現在のほとんどの機器はMRIに対応しています。


(注3) 機械的サポート療法(急性心筋梗塞の頁参照)
薬剤では治療困難な心不全の場合、大動脈バルーンポンピング、インペラ、ECMO(エクモ)、さらには補助人工心臓などの機械的サポートが用いられます。
(注4) 心臓リハビリテーションについて
心疾患(心筋梗塞、心不全、狭心症、心臓手術後など)を患った患者が回復し、生活の質(QOL)を向上させるためのです。患者の心臓の機能を改善し、再発予防や合併症の予防、心臓の健康を保つことを目的としています。当院では心不全入院のほか、急性心筋梗塞、開心術後に行われています。年に一回、横須賀市内で患者さんとご家族、医療スタッフによる心臓リハビリウォーキングを行っています。
上記の通り様々な治療がありますが、何より大事なのは心不全を進行させないこと、一度悪化してもしっかり治療を行い、心臓リハビリを行い、内服を守り再発を防ぐことです。そのためには普段から減塩に心がける、良質な睡眠を取る、ストレスを溜めない、禁煙を守る、など生活習慣を整えることが大切です。

どんな病気?
下肢を養う動脈が、動脈硬化症のため狭くなったり、詰まったり(閉塞したり)することで、歩いた時にふくらはぎがだるくなったり、足の傷が治りにくくなったりする病気です。 心臓の周囲を養う冠動脈疾患(例:狭心症)や脳血管疾患との合併例が多いことで知られています(図1)。足や頸部の血管が狭い方は、心臓の血管が狭くなっていないか調べることが必要なこともありますし、その逆もしかりです。

症状
- 間欠性跛行(歩いた時のふくらはぎの筋肉痛、だるさ)
- 安静時疼痛
- チアノーゼ(色調変化)(以下写真)
- 発赤・腫脹(以下写真)
- 潰瘍・壊疽

検査
身体診察:大腿動脈、膝窩動脈、足背後脛骨動脈の触知
足関節上腕血圧比(ABI):足と腕の血圧を同時に計測して比率を計算します。
皮膚組織還流圧検査(SSP)
血管エコー
CTアンギオグラフィ
MRアンギオグラフィ
治療
至適薬物療法(optimal medical therapy: OMT)に 加え,禁煙,運動,体重管理など包括的な管理を行います。従来からの血管手術(下肢バイパス術)に加え、最近はカテーテル治療(EVT)(バルーン、ステント)が主流になってきています。
局所麻酔により血管内にカテーテルを挿入して行う低侵襲な方法で、短期間の入院で治療できます。
近年のデバイスの進歩により橈骨動脈アプローチ(手首)から下肢動脈を治療できる場合もあり、治療終了した直後から歩行可能となり、長時間の臥位安静を保つ必要がありません。
カテーテル治療(EVT)の病変部位による特徴
- 腸骨動脈病変はステント治療で長期開存が期待できます(図2)

- 大腿膝窩動脈病変は,薬剤溶出性ステント、薬剤塗布バルーン、自己拡張型ステント、末梢血管ステントグラフトなどから最適なデバイスを選択します(図3)

- 膝下動脈病変に対しては足趾潰瘍がある場合にバルーンによる血行再建を行います。創傷管理についてはフットケアチーム(図4)でサポートします

(図4)
どんな病気?
脈が1分間に50回未満とゆっくりになってしまうことを徐脈と言います。
徐脈になる原因として、1.洞不全症候群、2.房室ブロック、3.徐脈性心房細動、があります。
症状
- めまい
- ふらつき
- 失神
- 心不全(息切れ、むくみなど)
検査
12誘導心電図、24時間の長時間心電図検査であるホルター心電図のほかに、1~2週間程度連続で観察できる長時間心電用データレコーダ、さらに数か月単位で原因不明の失神や潜在性脳梗塞を観察できる植え込み型心電モニタ(ICM)があります(図1)。
そのほかに、背景にある心疾患精査のため、心臓超音波検査(僧帽弁逆流症の頁、参照)、冠動脈CT(狭心症の頁、参照)も併用します。

治療
機能しなくなった洞結節や房室結節の肩代わりをするための機械がペースメーカーです。
一般には鎖骨下静脈からリード線を右心房、右心室に挿入し、鎖骨下に埋め込んだおよそ3cm四方の本体に接続し心臓に刺激を与えます。本体の電池の寿命は7年から10年程度です。


近年では右心室内に直接留置する10円玉くらい小型のリードレスペースメーカー(図3)も使用されます。鎖骨の下の部分の皮下に傷もできず、リード線も血管内に残りません。

どんな病気?
安静時の脈拍数は個人差がありますが、通常1分間あたり50から80程度と言われます。運動したり興奮すると脈が早くなりますが、頻脈性不整脈はそれよりも脈拍数が多く、通常の脈が早くなる状態と違い、心臓内での刺激伝導が正常と異なる病態です。
心臓に血の塊ができて脳に飛んでいき脳梗塞を起こしたり、心不全の原因になる心房細動や、異常な電気の回路が生じて、そこをぐるぐるまわって脈が速くなってしまう心房粗動、WPW症候群、房室結節回帰性頻拍などがあります。

その中でも重篤な不整脈としては大きく2つあり、心室頻拍(Ventricular Tachycardia:VT)と心室細動(Ventricular Fibrillation:VF)になります。その原因としては、心不全、虚血性心疾患、心筋症が挙げられます。
症状
- 動悸
- めまい
- 脈の乱れの自覚
- 失神
- ふらつき
検査
12誘導心電図、24時間の長時間心電図検査であるホルター心電図のほかに、1~2週間程度連続で観察できる長時間心電用データレコーダ、さらに数か月単位で原因不明の失神や潜在性脳梗塞を観察できる植え込み型心電モニタ(ICM)があります。
そのほかに、背景にある心疾患精査のため、心臓超音波検査、冠動脈CTも併用します。
治療
抗不整脈内服による治療、高周波カテーテルアブレーション、植え込み型除細動器(ICD)などがあります
高周波カテーテルアブレーションとは?
カテーテルアブレーションとは、電極カテーテルを使用し、不整脈の原因となる異常な電気興奮の発生部位を電気的に焼き切って、電気的異常興奮経路を断ち切る治療法です。
カテーテルアブレーションでは、静脈麻酔や局所麻酔のもと、主に足の付け根にある太い血管からカテーテルを挿入し心臓まで到達させ、それを心臓の内壁に接触させながら心電図を記録します。通常に行われる心電図検査は胸や四肢に電極を貼って検査しますが、それを心臓内側から行うイメージです。この計測によって異常な電気経路の場所を突き止めます。この異常部分を探して立体的な3D画像を作ることを「マッピング」と呼びます。この地図(マップ)を基に不整脈治療を行います。
次に治療用のカテーテルを通電すべき位置に置き、高周波電流を流します。この通電治療により、カテーテル先端の小さな領域の心臓組織だけを電気的に焼却し、心筋細胞は死滅します。この焼却により胸で熱さを感じることがありますが、麻酔の影響で寝ていますので自覚することはほとんどありません。また不要な焼却を予防するため、合併症を予防するために、温度センサーを併用して治療をおこなっています。
近年の目覚ましい医療技術の進歩により、現在では様々な頻脈性不整脈に対してカテーテルアブレーションが行われています。当院では主に、心房細動、心房粗動、心室頻拍に対する治療が多く行われています。
植え込み型除細動器(ICD)
ICDは英語の「Implantable Cardioverter Defibrillator」の略で、日本語では「植え込み型除細動器」と呼ばれます。
体内に植え込まれて、心臓の動きを常時監視し、突然起こる命にかかわる重篤な不整脈を検知し、電気治療を自動で行う、体内植え込み型治療装置です。
日本では毎年約7000人の方がICD植え込み手術を受けており、突然死を回避できている方がいます。

どんな病気?
心臓は、左右の心房・心室というように、4つの部屋に分かれています。心房は上の部屋、心室は下の部屋と考えてください。心臓内で発生する電気信号によって、規則正しい運動を繰り返しています。
正常では、右心房にある洞結節という部分が司令塔となり、心拍数やリズムがコントロールされています。洞結節で、毎分50~100回の速さの規則正しい電気信号が発生し、心房→房室結節→心室と伝わります。この流れにより、心臓は規則的・効率的に収縮と拡張を繰り返すことができます。心房が収縮し心室へ血液を送り出した後に、心室が収縮し全身へ血液を送り出す、という効率の良い運動を、1日に約10万回繰り返し行ってくれています。
洞結節によりきれいにコントロールされた調律を、私たちは「洞調律」や「サイナスリズム」と表現しています。


心房細動とは?
不整脈の一種です。簡単に表現すると、脈が乱れてしまう状態です。
日本人における有病率は全体でおよそ1~2%とされており、加齢とともに上昇します。私たち循環器内科医が頻繁に遭遇する心疾患の一つです。
年齢別の心房細動有病率(%)
年齢 | 男性 | 女性 |
60~69 | 3.0% | 0.4% |
70~79 | 5.6% | 1.3% |
80~89 | 8.1% | 3.5% |
心房が小刻みに震え痙攣したようになり、心房がうまく収縮できなくなってしまいます。このために心房が担っていた、心房収縮(心房から心室へ血液を押し出す)ができなくなり、血液が渋滞してしまうことで心不全や血栓症(脳梗塞)リスクが高まります。
原因はさまざまです。
- 遺伝的素因、年齢など、介入困難なもの
- 高血圧、糖尿病、弁膜症や心筋梗塞などの心疾患、心不全、甲状腺機能異常などの疾患
- 喫煙、飲酒、ストレス、睡眠時無呼吸、肥満など生活習慣に関連するもの
心房細動の発生機序
ほとんどが左心房にある肺静脈(肺から酸素の多い血液が入ってくる血管)付近から電気信号が無秩序に生じ、その信号が左心房内に入り込むことで起こります。
心房全体は小刻みに、無秩序に興奮(300~400回/分にもなります)するので、痙攣したような状態になるため、しっかり収縮することができません。

この興奮がそのまま心室へ伝わると、即座に心不全や生命の危機につながってしてしまいます。そこで房室結節という、心房と心室の間で電気信号の橋渡しをする部分が、電気信号が間引いてくれます。この機能が備わっているために、心房細動となってもすぐに生命を脅かされることにはなりません。
しかし、房室結節に次から次へと押し寄せてくる電気信号により、心室に伝わる信号はランダムになってしまうため、不規則に動くことになります。結果、脈も不規則になります。心拍数は1分間に100~150回以上にもなることもあれば、50回以下になることもあります。
心房細動だと何が困る?
まずは、上記の通り、動悸や息切れなどの症状を引き起こすことがあります。症状のある(症候性)心房細動では、生活の質(QOL)が低下してしまいます。
さらに、心不全(心房細動のない患者さんと比較して4倍の発症リスク)と脳梗塞(5倍の発症リスク)を引き起こします。
心不全患者さんの約4割に心房細動が合併しており、脳梗塞患者さんの約3割は心房細動が原因の「心原性脳塞栓症」と言われています。これらの疾患と心房細動とは、密接な関連があります。
心房はぎゅっと収縮できずに震えている状態になりますので、そこで血液が渋滞してしまいます。心室が十分元気なうちは、それでもまだ耐えることができます。しかし他の心疾患の合併や加齢により、心室の力が弱まると、心不全へと陥りやすくなります。
また、心房内で血液が停滞しよどんでしまうことで、血栓をつくってしまうことがあります(特に左心房内)。その血栓が血液とともに流れていった場合、脳や全身の動脈がつまってしまうことがあります。心原性脳塞栓症は、急性発症で、しかも広範囲の脳梗塞となりやすいため、症状が重くその後の生活に支障が出てしまうことがあります。
長期的には、心房細動がある患者さんは死亡リスクが2倍に増加すると言われています。


症状
脈が乱れてしまうため、動悸、めまい、胸の違和感、息苦しさ、疲れやすい、などの症状が出ることがあります。
一方で、全く自覚症状が無い方もいます。
動悸や脈の乱れに気がついても、それが確実に心房細動とは言い切れません。

検査
診断確定には心電図検査が必要です。健診心電図で指摘されるケースも多いです。
不整脈が発作的におきている患者さんでは、心電図を記録しているときにたまたま発作が重ならなければ診断ができません。そこでホルター心電図などの長時間の心電図記録が可能な検査を追加することがあります。
最近ではスマートウォッチにより不整脈に気が付き、受診されるケースも増えています。


心臓超音波検査、CTなどで、合併している心臓疾患を探すこともあります。
治療
重症心不全などのケースを除き、即座に生命に関わる疾患ではないため、慌てずに治療戦略をたてます。患者さんの年齢・活動量・生活習慣・併存疾患・ご希望などから、方針決定していきます。
治療の目標は、
- 症状の消失・軽減とQOL改善
- 脳梗塞や心不全などの合併症の予防
- 長期予後の改善
です。
そのために、心房細動そのものに対しての治療と、合併症予防を行います。
まず合併症の予防として、抗凝固療法が大切です。
抗凝固薬は、以前はワーファリン一択でしたが、食事の制約があったり、効果が変動したり、出血という合併症も起きやすく、付き合い方が難しい薬剤でした。近年ではダビガトラン・アピキサバンなどのDOACというグループの薬剤が登場し、飲みやすさが改善しています。年齢・体重・腎機能で投与量を調節します。
脳梗塞のリスクは患者さんごとに異なります。
簡単なリスク計算方法として、CHADS2 scoreがあります。それぞれリスク因子の頭文字をとったものです。
C:心不全
H:高血圧
A:年齢、75歳以上
D:糖尿病
S:脳卒中の既往
C~Dは、該当すると1点です。Sは2点で、全部の合計点を出します。

1点以上の患者さんはDOACを服用することが推奨されています。またカテーテルアブレーションの手術前には、しっかりと抗凝固薬を服用していただく必要があります。(ワーファリンほどではないにしても、出血性合併症のリスクはあります。)
心房細動そのものに対しての治療は、大きく2パターンあります。
- 不整脈と付き合っていく:心拍数コントロール(心拍数を低下させる)
- 不整脈を根治させる :リズムコントロール(洞調律へ戻す)
リズムコントロールは、抗不整脈薬またはカテーテルアブレーションという選択肢があります。
リズムコントロールと心拍数コントロールを比較した研究では、リズムコントロールの方が心血管死亡や心不全入院などを予防する効果が高いことが明らかになっています。
また近年、カテーテルアブレーション(注1)に使用する機器の発展、安全性の確立により、カテーテルアブレーションでのリズムコントロールを目指すことが多くなってきています。抗不整脈薬加療と比較し、アブレーションによる心房細動再発予防効果が高いことが報告され、また脳梗塞リスクの軽減効果も報告されております。
さらに心房細動の診断からより早期に介入した方が再発しづらいことが明らかになってきました。
抗不整脈薬には副作用のデメリットもあります。またうまく洞調律化しても、いつまで薬剤を続けるのか?という問題もあります。
以上から、国内でもカテーテルアブレーションの実施件数は上昇しております(全国で年間10万例以上)。
しかし、早期介入が良いと言っても、アブレーションは合併症リスクを伴う手術です。患者さんのご年齢、症状、心不全の有無、脳梗塞の有無などから、実施すべきかどうか総合的に判断する必要があります。
私たちは、患者さんの状態・希望の把握に努めます。
患者さんと相談し、また当科チーム内でも協議の上、無理のない治療を目指していきます。

(注1)カテーテルアブレーションとは
カテーテルアブレーションとは、電極カテーテルを使用し、不整脈の原因となる異常な電気信号の発生部位・回路を焼き、不整脈が発生しないよう根治を目指す治療です。主に、脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)や、収縮のタイミングがずれる不整脈(期外収縮)の治療として選択されます。
方法
静脈麻酔により患者さんは眠った状態で手術を受けます。途中で疼痛を感じることもありますが、適宜鎮痛薬や麻酔薬を追加します。
主に首や足の付け根にある太い静脈から、各種器具の出入り口となるシースという管を挿入します。そのシースから電極カテーテルを心臓まで進めて心電図を記録します。この心電図は通常の心電図とは異なり、心臓内で詳細に電気信号を確認します 。
心房細動の治療では左心房へカテーテルを進める必要があります。静脈から進めたカテーテルは右心房に到達しますので、そこから細い針で心房中隔(右心房と左心房を隔てる薄い壁)を穿刺して左心房まで進みます。超音波や透視画像で位置を確認し慎重に穿刺します。
ここで、マッピングカテーテル(図)を用いて、心臓の3D画像を作成し、治療のターゲットとなる部位を確認します。
また、心臓内にカテーテルから電気刺激を与えることで、異常な電気回路の特定を行うこともあります。
3Dマッピングシステムが開発されたことで、心臓の解剖・電気回路・カテーテルの位置などをすべて画面上に表示することができます。このシステムにより、手技の安全性が向上し、またレントゲン透視に頼ることなく操作ができるため、放射線被爆軽減にもつながっています。

次に治療用カテーテルを進め、ターゲットとなる部位へ当て、高周波電流を流します。カテーテル先端は約4㎜であり、その部位だけを焼灼します(やけどを作ります)。この焼灼により、不要な電気信号や回路を遮断します。焼灼の範囲や回数は、不整脈の種類・心臓の大きさなどによって変わります。


最後にすべてのカテーテル・シースを抜去し、圧迫止血をした後に病室へ戻ります。その後止血のために数時間の安静が必要となります。止血のためにはこの安静が重要ですが、腰痛などで苦痛が強いときには、適宜痛み止めなどを使用します。
成功率
心房細動であれば70~80%、心房粗動であれば90%程度
と言われています。ただし、アブレーションから3か月以内は、手術そのものの影響により、不整脈が誘発されてしまうこともあります。その後に落ち着いてくるケースも多いことから、再発の有無は3か月以降に判定します。
もし再発が確認された場合には、抗不整脈薬で様子を見る、電気的除細動を行う、再度カテーテルアブレーションを行う、などの選択肢があります。
合併症
効果や安全性が確立されている手術ですが、合併症のリスクは0ではありません 。
穿刺部の出血、脳梗塞、心タンポナーデ、別の不整脈、などの危険性はあります。
私たちも十分に注意して行います。
具体的な内容については、担当の医師からしっかり説明を行います。
まとめ
カテーテルアブレーションに使用する様々な機器の開発・改良・安全性の確立、また治療効果を示す研究結果が報告され、カテーテルアブレーションの実施件数は増加しております(全国で年間10万例以上)。 当院でも、主に心房細動や心房粗動に対して、年間50-60件程度の実績があります。
カテーテルアブレーションも手術なので、合併症のリスクはあります。また患者さん一人ひとりで状況は違いますので、治療内容の提案は患者さんごとに変わることもあります。
不明な点は、担当医や看護師にご質問ください。
治療内容にご納得いただき、私たちと患者さん・ご家族が同じ方向に向かって治療を進めていきたいと思います。
どんな病気?
心臓は4つの部屋に分かれています。そのうちポンプとして重要なのが左室です。
その出口についている“大動脈弁”が、動脈硬化と同じ機序で、石灰化等により硬くなり、弁の開きが不完全になることで、血流の流れが妨げられる、いわゆる“弁の狭窄”が原因です。
これにより心臓に負担がかかり、心不全や不整脈を起こす病気です。
重症の大動脈弁狭窄症で症状が出始めると数年で死に至る可能性のある重大な病気です。
症状
- 息切れ
- 動悸
- 疲れやすさ
- 胸の痛み
- 気を失いそうになる
最初は「動いた時の息切れのため、以前に比べ無意識に体を動かさなくなっている」「年を取ったせいだと思っている」など症状に慣れてしまって気が付かない場合が多いのです。
検査
検査の前に、重要なのは“聴診”です。検診やかかりつけで、ぜひ聴診をしてもらい、心雑音がする方は、循環器内科まで紹介してもらってください。
一般的な循環器の検査は採血、心電図、レントゲンですが、次に行う最も重要な検査は、「心臓超音波」です。それにより大動脈弁狭窄症はほぼ診断がつきます。
治療
従来からの外科的大動脈弁置換術(SVAR)に加え、経皮的大動脈弁植え込み術(TAVI)があります。
SVARは従来の正中開胸と肋間開胸のMICS(ミックス)があり、MICSは正中開胸よりも傷が小さく社会復帰も早いというメリットがあり、当院では積極的に取り組んでいます。
また使用する弁は、生体弁と機械弁の二種類がありそれぞれにメリットデメリットがあります。
詳細は心臓外科ページを参照ください。
TAVIはカテーテルを使用して生体弁を留置する治療法で、傷口も外科手術より明らかに小さく、さらにSVAR術中で用いる心臓を完全に停止させる人工心肺を使用しないため、体に対する負担は少なく、数日で退院できるメリットがあります。

TAVI弁は大きく分けるとバルーン拡張型と自己拡張型の二種類の弁があります。


80歳以上のご高齢の方や、それ以下の年齢でも併存症のため手術の危険が高い方に向いている治療です。我々は内科と外科で構成されたハートチームで週三回のカンファレンスを行っており、患者さんの取って最善の治療法を忌憚ない意見で話し合っています。
どんな病気?
心臓の中にある4つの弁のうち、肺で酸素を含んだ血液は左心房に送られ、左心房と左心室の間にある僧帽弁を通って左心室に送られます。
僧帽弁閉鎖不全症は、様々な原因により僧帽弁が閉じることができないために左心室から左心房へと血液が一部逆流してしまう状態で、これにより全身の血液循環の効率が損なわれてしまいます。


症状
- 息切れ
- 動悸
- めまい
- 倦怠感
- 咳
症状がなくても「心雑音」でみつかる場合もあります
検査
心臓超音波検査、経食道心臓超音波検査、血液検査、胸部X線写真、心電図、心臓カテーテル検査
心臓超音波, 経食道心臓超音波検査
心臓超音波は、耳に聞こえない周波数の音を心臓に当て、その反射を解析し画像化することで、心臓の筋肉や弁をリアルタイムに描出する検査です。またドップラーという技術を使って、弁を通過する血流の速度を可視化し、弁の重症度の判定にも使用できます。
放射線を使うX線やCT検査、カテーテル検査のように被ばくのリスクがなく、外来で簡便に行えるというメリットがあります。体表面から当てる経胸壁心エコーは外来の循環器診療の主流となっています。
一方、さらに詳細に観察を要する場合は、経食道心エコーを行う場合があります。
この検査は、一時的に静脈麻酔を行って苦痛をとり、胃カメラのように超音波プローベを飲み込んでいただき、食道側から心臓を調べる検査です。経胸壁心エコーでは分からないような異常を見つけることができる有用な検査です。

治療
薬物治療
軽症から中等度の僧帽弁閉鎖不全症で自覚症状もない場合は、特に治療をせずに経過観察を行うこともあります。僧帽弁逆流を緩和させるために薬物治療を行いますが、薬物治療を行っても症状が取れなかったり、心不全を起こして入院治療が必要になることもあります。
外科手術
現状では手術方法は外科的手術が第一選択肢になります。胸を切開して心臓に到達し、人工心肺を使用して心臓の拍動を停止させて、僧帽弁を切除し、人工弁に置き換えたり、広がってしまった弁を元の大きさに縫い縮めたり、切れてしまった腱索を人工腱索で再建したり、自分の弁を修復したりする手術です。
経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip:マイトラクリップ)
胸を開くことなく、心臓を止めることなく(人工心肺を使用せずに)、すなわち患者さんに対する負担が少なく僧帽弁閉鎖不全症に対する手術が行える治療です。
高齢のため体力が低下し、または肺疾患や肝疾患など他疾患を有したり、極端に心臓の収縮力が低下し、外科的手術のリスクが高い患者さんが対象になります。
当院では2024年12月より施設認可を受け、インプランター指導医も在籍しています。

アボットジャパン合同会社
どんな病気?
全身から心臓へ戻ってきた血液を肺へ流す血管(肺動脈)が血栓で詰まったり、変性して細くなって、呼吸が苦しくなる病気です。
突然発症するものや慢性的にじわじわ発症するタイプがあります。
一部は肺自体の病気や心臓弁膜症が原因のものもあります。

肺血栓塞栓症とは?
肺血栓塞栓症とは、足の静脈の血栓が心臓に向かって流れ、心臓から肺の血管を詰まらせ、突然の呼吸困難、失神、時には心停止に至る病気です。
静脈血栓との関連があり、突然意識を失って倒れたり、そのまま命を落とすこともあります。
急性心筋梗塞、急性大動脈解離と並び、循環器三大救急疾患の一つと言われます。
肺に詰まった血栓が時間がたって慢性化した場合は慢性肺塞栓症と呼ばれています。


症状
- 息切れ
- 呼吸困難
- 胸痛
- 失神
検査
レントゲン、心電図、心臓超音波検査、造影CT検査、心臓カテーテル検査

治療
抗凝固療法
カテーテル治療 BPA(Balloon pulmonary angioplasty:肺動脈バルーン形成術)
肺動脈血栓内膜摘除
薬物療法
ワーファリンやDOACと言われる新規抗凝固薬の内服や、血管拡張剤の内服点滴があります。低酸素血症がある場合、酸素療法も実施します。
侵襲的治療
カテーテルを使った肺動脈バルーン形成術(BPA)や外科的な肺動脈血栓内膜摘除があります。カテーテル治療は局所麻酔下でできる低侵襲な治療であり、肺動脈末梢の病変に適している治療法です。外科的な肺動脈血栓内膜摘除は全身麻酔下で行われる手術ですが、固くなった肺動脈の血栓を肺動脈内膜と共に摘出します。血栓が肺動脈中枢にある場合に適応となります。
肺血栓塞栓症の中に、慢性肺血栓塞栓症(CTEPH)という疾患があります。肺の血管(肺動脈)の中に血液のかたまり(血栓)が慢性的に詰まり、血液の流れが悪くなり、息切れを生じるようになる病気です。進行すると「肺高血圧症」という状態となり、心臓や肺に大きな障害を生じるようになります。
検査治療実績
放射線関連
2019 年度 | 2020 年度 | 2021 年度 | 2022 年度 | 2023 年度 | ||
カテーテル 検査治療 | CAG | 839 | 584 | 627 | 615 | 479 |
PCI | 353 | 296 | 272 | 260 | 240 | |
ACSへの緊急PCI | 67 | 35 | 57 | 72 | 60 | |
緊急PCI | 114 | 86 | 91 | 76 | 82 | |
待機的PCI | 239 | 210 | 181 | 184 | 158 | |
EVT | 24 | 119 | 87 | 117 | 111 | |
PMI(新規) | 46 | 38 | 15 | 40 | 40 | |
リードレス | 2 | 1 | 6 | 3 | ||
PMI(交換) | 15 | 20 | 24 | 19 | 15 | |
ICD(新規) | 0 | 0 | 4 | 2 | 3 | |
ICD(交換) | 0 | 2 | 0 | 2 | 1 | |
CRT-D(新規) | 2 | 3 | 2 | 10 | 5 | |
CRT-D(交換) | 2 | 2 | 1 | 1 | 3 | |
CRT-P(新規) | 1 | 0 | 2 | 2 | 5 | |
CRT-P(交換) | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | |
心臓CT | 369 | 381 | 409 | 366 | 430 | |
心臓MRI | 8 | 16 | 31 | 14 | 12 | |
心臓核医学 | 267 | 262 | 352 | 302 | 202 | |
画像診断 | 心臓CT | 369 | 381 | 409 | 366 | 430 |
心臓MRI | 8 | 16 | 31 | 14 | 12 | |
心臓核医学 | 267 | 262 | 352 | 302 | 202 |
生理機能検査
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
経胸壁心臓超音波検査 | 5,488 | 5,986 | 5,873 |
経食道心臓超音波検査 | 99 | 89 | 76 |
頚動脈超音波検査 | 555 | 575 | 568 |
下肢静脈超音波検査 | 666 | 894 | 898 |
下肢動脈超音波検査 | 160 | 171 | 174 |
その他血管超音波検査 | 116 | 160 | 129 |
トレッドミル運動負荷検査 | 241 | 249 | 196 |
ホルター心電図 | 545 | 565 | 465 |
血圧脈波検査 | 1,854 | 2,087 | 2,188 |
研修希望の皆様へ
『循環器救急集中治療フェロートレーニングプログラム~Critical Care Cardiology Fellowship Program~』について
当院ではこのたび、『循環器救急集中治療フェロートレーニングプログラム~Critical Care Cardiology Fellowship Program~』医師を募集しております。
循環器領域は、専門性が高く、かつ、疾患が多岐にわたるため、すべての分野に精通することは困難であるため、救急や集中治療を行う上で、救命や病態把握に必要な知識・手技の習得に重点を置き、研修・診療を行うプログラムです。また、待機的な症例を通して手技の精度を上げ、緊急時でも安全・正確に対応できるように、修練を積んでいきます。
循環器内科専門医プログラムで経験が必須とされている検査・手技に関しては、一般的な循環器専門医のレベルに到達できるように術者として研修を積むことができ、日本心血管インターベンション学会認定医取得の要件である経皮的冠動脈形成術 (PCI) 100件を目標に研修を行っていきます。
内科専門医を取得している場合は、循環器内科専門医の取得も可能です。
横須賀市立総合医療センターで循環器内科医として勤務し研修を行います
救急外来での対応や集中治療管理、他院からの紹介や他科コンサルト症例などの急性期や重症例を主に診療します。循環器専門医として必要な手技や検査は、予定入院症例の冠動脈造影、右心カテーテル検査、ペースメーカー植え込みなどから経験してもらい、いずれも専門医の指導下で術者として行います。
最低限の目標
- 心不全、急性冠症候群、不整脈の初期対応と入院管理
- 冠動脈造影の読影と手技の習得、血管確保を安全に確実に習得
- 冠血流予備量比 (FFR) ・心臓核医学検査などの虚血評価の習得
- PCIをType A病変から順次施行(冠動脈造影 100件以上、かつ、手技が安全、安定していると判断されれば術者としてPCIを行う)
- IABP・ECMO・Impella挿入とその後の管理
- 経静脈ペーシングの挿入と管理(恒久的ペースメーカー植え込み術が必要になった場合は、植え込み術も行う)
- 経胸壁心エコー検査の施行とレポート作成
- 経食道心エコー検査の施行とレポート作成
- ハートチームとして心臓外科と手術適応に関して協議し、方針決定
- 年1回以上の学会発表
その他、希望により以下の研修・手技の修練も可能
- 末梢動脈疾患の血管内治療
- CRT・CRT-Dの挿入とデバイス外来管理
- 電気生理学的検査 カテーテルアブレーション(オペレーターは要相談)
- 心臓外科でのローテーションや手術への参加・術後管理
- 心臓外科手術の麻酔導入・管理
実際にうわまち病院循環器内科2年間で経験できた手技・検査件数(オペレーターのみ)
冠動脈造影 | 342例 |
PCI | 109例(うち、ACS 39例) |
経静脈ペーシング | 16例 |
IABP | 10例 |
ECMO | 6例(うち、VV-ECMO2例) |
Impella | 2例 |
恒久的ペースメーカー留置 | 37例 |
IVCフィルター留置 | 6例(挿入した例は自分で抜去6例) |
心嚢穿刺 | 6例(うち、心タンポナーデ3例) |
経食道心エコー | 111例 |
日本心血管インターベンション学会認定医 | 取得予定 (2年間で条件クリア) |
対象・取得可能資格
対象 | 循環器を専門的に勉強したい、もしくは、サブスペシャルティーとしたい若手救急医・集中治療医 (医師免許取得後、概ね6年目以降:トレーニング開始時) かつ、 循環器集中治療において今後指導的立場を目指す医師 (内科専門医を取得しており集中治療専門医を目指したい・循環器の修練を積みたい医師も可能です) |
取得可能資格 | ・集中治療科専門医 ・日本心血管インターベンション学会認定医 ・内科専門医を取得している場合は、循環器専門医 |
詳細はこちらからご確認ください。
採用情報
採用情報についてはこちらからご確認ください。
外来診療予定表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
---|---|---|---|---|---|---|
初診 | 荒木 浩 / 山脇 理弘 | 黒木 茂 | 岩澤 孝昌 / 羽柴 克孝 | 沼田 裕一 / 南本 祐吾 | 泊口 哲也 | 交代制 |
再診 (予約制) | 黒木 茂 | 岩澤 孝昌 | 沼田 裕一 | 荒木 浩 / 圓谷 紘乃 / 羽柴 克孝 | 泊口 哲也 / 南本 祐吾 | |
専門外来 (予約制) | 荒木(ASO・末梢血管) | 包括的心不全センター 岩澤・沼田・黒木 | フットケア外来(第2,4週) | 包括的心不全センター 岩澤・沼田・黒木 | ||
弁膜症外来(山脇) | 荒木(ASO・末梢血管) | 弁膜症外来(南本) |
診療変更・休診情報
2025年3月13日(木) | 羽柴医師 | 休診 |
2025年3月13日(木) | 圓谷医師 | 休診 |
2025年3月17日(月) | 山脇医師 | 休診 |
2025年3月17日(月) | 荒木医師 | 休診 |
2025年3月17日(月) | ASO末梢血管 | 休診 |
2025年3月24日(月) | 黒木医師 | 休診 |
2025年3月25日(火) | 黒木医師 | 休診 |
2025年3月26日(水) | 黒木医師 | 休診 |
2025年3月27日(木) | 羽柴医師 | 休診 |
2025年3月27日(木) | 圓谷医師 | 休診 |
2025年3月31日(月) | 山脇医師 | 休診 |
※3月フットケア外来 休診
スタッフ紹介


管理者、循環器内科部長
沼田 裕一
主な担当
インターベンショナルカルディオロジー、心不全、心臓リハビリテーション
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会認定内科医、日本高血圧学会高血圧専門医、
日本高血圧学会高血圧指導医、日本病院会認定病院総合医、難病指定医、
身体障害者福祉法に基づく指定医(心臓機能障害)

副病院長、循環器内科部長 集中治療部部長兼任
岩澤 孝昌
主な担当
虚血性心疾患、心不全、肺高血圧症
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、
日本病院会認定病院総合医、難病指定医、
身体障害者福祉法に基づく指定医(心臓機能障害)、
平成26年度神奈川県自治体病院開設者協議会病院職員表彰

循環器内科部長
黒木 茂
主な担当
循環器一般、カテーテルインターベンション、虚血性心臓病、心不全、末梢血管疾患、ICD、CRT
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会認定内科医、心血管カテーテル治療認定医、
ICD/CRT研修終了医、難病指定医、身体障害者福祉法に基づく指定医(心臓機能障害)、
令和元年度神奈川県自治体病院開設者協議会病院職員表彰

循環器内科部長
泊口 哲也
主な担当
循環器全般
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本医師会認定産業医

循環器内科部長
荒木 浩
主な担当
循環器全般、カテーテルインターベンション
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、心血管カテーテル治療専門医、
日本専門医機構総合診療専門研修特任指導医、難病指定医、
身体障害者福祉法に基づく指定医(心臓機能障害)

循環器内科副部長
山脇 理弘
主な担当
冠動脈カテーテルインターベンション(左主幹部、分岐部病変治療)、
心臓弁膜症カテーテル治療(TAVI,MitraClip)、経皮的左心耳閉鎖システム;WATCHMAN
専門分野、資格など
博士(医学、生命科学)、日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、
FJCC(Fellow of Japanese College of Cardiology)、日本心血管インターベンション
治療学会専門医、JTVT経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)指導医
(Core Valueシリーズ、Sapienシリーズ)、アボットMitraClipインプランター指導医、
周術期経食道心エコー認定医(JB-POT)、浅大腿動脈ステントグラフト実施医、
植え込み型除細動器(ICD)、ペーシングによる心不全治療(CRT)研修修了医、
AHA BLS/ACLS プロバイダー、日本循環器病学会 関東甲信越支部 評議委員、
日本循環器病学会 関東甲信越支部 学術委員、
日本心血管インターベンション学会 関東甲信越地方会 運営委員、
Tokyo Coronary Intervention Conference(TCIC)世話人、
Tokyo percutaneous cardiovascular Intervention(TOPIC)SHDプログラム委員、
Structure Club Japan世話人、Japanese Bifurcation Club 理事、
早稲田大学レギュラトリーサイエンス研究所招聘研究員、
多施設共同研究:(社団法人)RELIANCEレジストリー研究会代表理事、
The Best Doctors in Japan™2024-2025(Teladoc HEALTH)

循環器内科副部長
羽柴 克孝
主な担当
冠動脈インターベンション、蘇生科学、救急、循環器全般
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本内科学会認定内科医、
日本救急医学会救急科専門医、心血管カテーテル治療専門医、
浅大腿動脈ステントグラフト実施医、難病指定医、
身体障害者福祉法に基づく指定医(心臓機能障害)

循環器内科医
南本 祐吾
主な担当
循環器全般、虚血性心疾患、弁膜症
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、心血管カテーテル治療認定医、
身体障害者福祉法に基づく指定医(心臓機能障害)

循環器内科医師
圓谷 紘乃
主な担当
循環器全般
専門分野、資格など
日本循環器学会専門医、日本内科学会認定内科医、心血管カテーテル治療認定医

循環器内科医師
米澤 将克
主な担当
循環器全般
専門分野、資格など
日本内科学会日本専門医機構認定内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、
日本救急医学会認定ICLSコース修了、AHA認定ACLSプロバイダー

循環器内科医師
山口 貴宣
主な担当
循環器全般

専攻医 循環器内科
大橋 龍太郎
主な担当
循環器全般
患者さんのご紹介について
地域医療連携室では、紹介患者さんの診察予約を行っております。
詳しくは下記よりご確認ください。