脳神経外科について
脳神経外科の外来は月曜から土曜日までの6日間で行なっています。
午後は外来診療を行っておりません。
対象疾患
脳卒中とは
脳の血管に何らかの異常が起こり、脳の細胞に必要な酸素や栄養が行き届かなくなることで、脳の一部が障害を受ける病気です。脳卒中は突然に発症し、時間が経つにつれて脳細胞はどんどん死滅していくので、重い後遺症を残す可能性があるだけでなく、時には命に関わることもあります。したがって早期に発見して治療を行う必要があります。当院では、24時間365日、脳卒中に対する診療を行っています。「脳卒中」とは以下の3つを合わせた総称名です。
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
脳梗塞とは?
脳の血管が詰まり、脳血流が途絶えることで脳組織が障害を受ける病気です。短時間のうちに脳の機能が失われ、適切な治療がなされないと、麻痺や言語障害などの後遺症が残ったり、生命に関わることもあります。大きく3つのタイプに分類されます。
- アテローム血栓性脳梗塞:脳の太い血管が、動脈硬化が原因で詰まる。
- ラクナ梗塞:脳の太い血管から枝分かれした細い血管が詰まる。
- 心原性脳塞栓症:心臓にできた血栓が脳の血管に飛んで詰まる。
原因
- 動脈硬化
高血圧や高コレステロール、糖尿病などにより血管の内側が傷つき、プラークと呼ばれる沈着物が溜まることで血管が硬くなります。その結果、血管が細くなり、詰まりやすくなります。 - 心房細動
不整脈の一つで、脈が速くなったり遅くなったりすることで、心臓内に血の塊り(血栓)ができやすくなります。その血栓が脳の血管に飛んで詰まります。 - 脱水・低血圧
脱水状態になると血液がドロドロになって流れが悪くなり、血栓ができやすくなります。
治療
急性期
- 血栓溶解療法(t-PA)
発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬を点滴で投与します。 - 血栓回収療法
カテーテルを脳の血管の詰まっている部分まで誘導し、血栓を直接取り除く方法です。原則発症から8時間以内が適応ですが、症例によっては24時間以内まででも行えることがあります。
当院では脳血管内治療の専門医が複数人常勤として居るため、十分な診療体制を引いております。
慢性期
- 薬物治療:抗血小板薬や抗凝固薬といった「血液をサラサラにする薬」を使用します。
- リハビリテーション:出現した麻痺や言語障害などの神経症状の改善を図るために行います。
予防
脳梗塞は予防が大事な病気です。脳梗塞の原因として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈が挙げられます。これらは生活習慣が関与していることが多いため、まずは、血圧の管理、禁煙、食事管理、適度な運動に留意した生活を送りましょう。
脳出血とは?
脳の血管が破れて、脳内に出血が起こる病気です。脳内に溜まった血液は血腫となり、周囲の脳細胞を圧迫・破壊することで意識障害や嘔吐、さまざまな神経症状を引き起こします。さらに脳にむくみが生じて脳の圧迫が強くなると、命に関わることもあります。
原因
- 高血圧:最も多い原因です。高血圧の状態が長年続くと、脳の血管が脆くなり破れやすくなります。
- 動脈瘤:主にくも膜下出血の原因(後述)となりますが、脳出血を起こすこともあります。
- 血管奇形(脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻など):
脳の動脈と静脈が直接つながることで静脈に負荷がかかり、出血を起こすことがあります。 - もやもや病(詳細は後述)
- アミロイド血管症:脳の血管にアミロイドという物質が沈着し、血管が脆くなります。高齢者に多い病態です。
- 血液の病気、血液サラサラの薬の使用:血が止まりにくくなることが原因です。
治療
- 内科的治療:
出血の進行を止め、血腫が拡大しないように血圧を下げます。また、脳のむくみをとったり、けいれんの発症を抑える薬を使用することがあります。 - 手術:
脳を強く圧迫していて意識が悪く、生命の危険性が生じる可能性があると判断された場合、開頭または神経内視鏡を用いて、血腫を取り除く手術を行います。ただし、この手術の第一の目的はあくまで「救命」であり、すでに認めている麻痺などの神経症状を改善させるものではありません。したがって、手術を行うことによるメリットが見込めないような軽症もしくは最重症の場合は、外科手術は選択されません。 - リハビリテーション:
セラピストによるリハビリテーションによって機能回復を目指します。
予防
脳出血は予防が大事な病気です。特に高血圧には注意が必要で、一番の対策は食事における「減塩」です。定期的な運動も血圧コントロールには有効です。また、毎日の血圧測定を習慣とし、自己管理も重要です。必要に応じて血圧を下げる薬を使用します。
くも膜下出血とは?
脳の表面を覆う「くも膜」と「軟膜」の間のくも膜下腔に出血が生じる病気です。突然の激しい頭痛が生じるのを特徴とし、「バットで殴られたような」「今まで経験したことのない」「人生最悪の」などと形容される程の頭痛と言われています。その他にも、嘔吐や意識障害、けいれんを認めることがあり、命に関わる深刻な病気です。
原因
くも膜下出血の多くは、「脳動脈瘤の破裂」で起きます。脳動脈瘤とは脳の動脈にできたふくらみ(コブ)で、動脈の壁が薄くなったり弱くなったりしている部分であり、これが破裂することでくも膜下出血となります。
血圧が急激に上昇すること(排便時、入浴中、興奮した時など)が引き金になることはありますが、多くは前触れなく突然破裂します。
治療
くも膜下出血に対する治療においては、乗り越えるべき壁が3つあります。
動脈瘤の出血した部分は、かさぶたができて一時的に止血されています。しかしながら、この状態は、血圧の上昇などにより、いつなんどき再出血を起こすかどうかわからない、非常に不安定な状態です。再出血を起こすと、脳へのダメージが追加されることとなり、予後が非常に不良になる確率が上がります。
そこで1つ目の壁は、脳動脈瘤の「再破裂」を防ぐことです。
再破裂を防ぐためには内科的治療、そして引き続いて手術を行います。
- 内科的治療:
薬を使用して、血圧を下げます。また、血圧上昇の原因となりうる痛みや体動を抑えるために、薬を使用して鎮痛・鎮静を行います。 - 手術
A)開頭クリッピング術:頭蓋骨を開けて脳動脈瘤の根本にチタン性のクリップをかけて、脳動脈瘤の入口を閉鎖することで血液が流れ込まないように処置を行い、再破裂を防ぎます。再発リスクが極めて低く確実性の高い治療ですが、開頭術を行うため体への負担は大きいです。
B)脳血管内治療(コイル塞栓術):足の付け根から細い管(カテーテル)を挿入し、脳動脈瘤内まで誘導し、瘤内をプラチナ性のコイルで詰めます。動脈瘤内に血液は入り込みますが血栓が形成されて破裂予防が達成されます。体への負担が少なくやさしい治療ですが、比較的再発率が高いことが言われています。
これらの手術はいずれも一長一短あり、患者さんの状態や脳動脈瘤の形や大きさ、部位を考慮して、最適な治療を選択します。上記の手術は、生命の危険性を回避するために極めて重要ですが、脳のダメージを改善させる効果はなく、あくまでも再破裂を防ぐことだけが目的です。くも膜下出血を起こしてから2週間は、「脳血管れん縮」といって、動脈が細くなる発作を起こす可能性があり、脳梗塞の原因となります。
そこで2つ目の壁は、「脳血管れん縮」を防ぐことです。
れん縮を防ぐ、もしくは改善させるような薬による治療がメインですが、バルーンという小さな風船がついたカテーテルを細い動脈に誘導して、直接動脈を広げる治療が必要になる事もあります。2週間の脳血管れん縮期を過ぎると一安心ですが、ここからいわゆる慢性期になると、脳の周りを循環している髄液の流れが滞り、脳内に貯留することで頭蓋内圧が上がることで、歩行障害・失禁・認知症様症状を特徴とする「水頭症」を発症することがあります。
そこで3つ目の壁は、「水頭症」に対する治療を行うことです。
治療は手術が必要です。脳や脊髄に貯留している髄液を腹部に流すべく、それらをつなぐ管を埋め込むシャント手術を行います。
予防
くも膜下出血の唯一の予防は、脳動脈瘤が存在するかどうかを早期に発見し、対処することです。その際に見つかった脳動脈瘤を「未破裂脳動脈瘤」と言います(次の項で説明します)。
未破裂脳動脈瘤とは?
脳の動脈の一部が膨らみ、コブを形成した状態を「脳動脈瘤」と呼びます。このコブが破裂するとくも膜下出血(前項を参照)になりますが、破裂していない状態のものを、未破裂脳動脈瘤と言います。通常は無症状で、他の症状や病気の検査中や脳ドックで偶然に発見されることが多いです。
原因
明らかな原因は不明ですが、遺伝的要因が関連していることがあり、ご家族の中で脳動脈瘤を持っていたり、くも膜下出血になった方がいる場合は、注意が必要です。
特徴
仮に未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、気になることは破裂する確率だと思います。動脈瘤の大きさや場所によって異なるため、確定的なことは言えませんが、年間1%前後と言われています。したがって確率的には比較的低く、すべての動脈瘤が破裂するわけではありません。
比較的破裂のリスクが高い動脈瘤は下記となります。
- サイズ:5mm以上
- 場所:前交通動脈瘤、内頚動脈後交通動脈分岐部瘤
- 形状:不整形、小さな突起のような膨らみを持つ
治療
- 経過観察
上記を参照に破裂のリスクが低いと判断される場合、定期的な画像検査(MRI/MRAなど)で様子を見ます。 - 手術
A)開頭クリッピング術:頭蓋骨を開けて脳動脈瘤の根本にチタン性のクリップをかけて、脳動脈瘤の入口を閉鎖することで血液が流れ込まないように処置を行い、再破裂を防ぎます。再発リスクが極めて低く確実性の高い治療ですが、開頭術を行うため体への負担は大きいです。
B)脳血管内治療(コイル塞栓術+α):足の付け根から細い管(カテーテル)を挿入し、脳動脈瘤内まで誘導し、瘤内をプラチナ性のコイルで詰めます。また、動脈瘤の間口が広くコイルがうまく収まりきらないと判断される場合は、ステント(金属の筒)を併用してコイルの逸脱を防ぐ方法を用いることがあります。動脈瘤内に血液は入り込みますが血栓が形成されて破裂予防が達成されます。体への負担が少なくやさしい治療ですが、比較的再発率が高いことが言われています。また、異物を血管内に留置する治療なので、術前から術後しばらくは血液サラサラの薬を飲まなくてはいけません。
C)フローダイバーターステント:近年急速に普及している最新の治療で、動脈瘤のある正常な血管に特殊な網目構造をしたステントを置くだけで、動脈瘤内の血流が停滞して血栓化を促して治療効果を生み出すことができます。ただし、こちらの治療も術前から術後しばらくは血液サラサラの薬を飲まなくてはいけません。
これらの手術はいずれも一長一短あり、患者さんの状態や脳動脈瘤の形や大きさ、部位を考慮して、最適な治療を選択します。
手術以外の破裂予防
手術以外に脳動脈瘤を完全に破裂させないようにする方法はないのですが、「高血圧」「喫煙」「過度の飲酒」が破裂と関係があることが言われているため、これらを避けるようにすることが大事です。
頚動脈狭窄症とは?
頚動脈は脳につながる首の大切な血管で、この部分にコレステロールの塊(プラーク)が蓄積して狭くなった状態です。このプラークによって、以下の3つの機序で脳梗塞を起こすことがあります。
- プラークの蓄積により頚動脈が著しく狭くなり、脳へ送られる血液量が減る。
- 動脈内に顔を出した柔らかいプラークが脳に飛ぶ。
- 傷ついたプラークに血液の塊(血栓)が付き、それが脳に飛ぶ。
原因
プラークはコレステロールの蓄積で形成されます。その原因は動脈硬化です。動脈硬化の進行に関与するものは、「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「喫煙」「肥満」「加齢」などで、生活習慣が大きく関与します。
検査・診断
- 頚動脈エコー:超音波を使用した検査で、最も簡便・低侵襲です。頚動脈の狭窄の程度やプラークの状態がわかります。
- MRA:磁気を使用した検査で、簡便・低侵襲です。頚動脈の狭窄の程度やプラークの柔らかさがわかります。
- 造影CT:造影剤を使用して、動脈の形状を詳細に写します。プラークの硬さ(石灰化)が確認できます。
- 脳血管撮影:カテーテルを用いて直接動脈に造影剤を流す検査で、動脈の狭窄や形状を最も正確に評価することができます。
治療
治療の目的は脳梗塞の発症を予防することです。
- 内科的治療
狭窄の程度が軽度だったり、偶然狭窄が見つかったケースなどは、まずは内科的治療を優先することが多いです。生活習慣の乱れに伴う動脈硬化の進行が原因ですので、血圧や脂質、血糖値に関する徹底的な管理を行い、減塩、適度な運動、禁煙を勧めていきます。必要に応じて血液サラサラの薬を検討することもあります。 - 手術
高度な狭窄まで進行したり、実際に脳梗塞を発症したりした場合は、手術を検討します。手術は以下の2つの方法があり、動脈の狭窄やプラークの状態、全身状態を考慮して選択します。
A)頚動脈内膜剥離術:全身麻酔で、皮膚を切って頚動脈を露出し、頚動脈の内側にたまったプラークを直接取り除きます。脆弱で不安定なプラークに対しても、確実に取り除くことができ、長期的な予防効果が担保されている治療です。一方で、全身麻酔下の外科手術ということで、身体への負担は比較的高いです。
B)頚動脈ステント留置術(カテーテル治療):局所麻酔でも実施可能で、足の付け根からカテーテルを挿入し、頚動脈の狭窄部位まで誘導して、ステント(金属の網目上状の筒)を留置して、プラークを動脈の内側から押し潰し狭窄部分を広げる治療です。治療も短時間で終了することが多く、身体への負担は少ないのが利点ですが、治療中にプラークが頭に飛んで脳梗塞を起こす危険性が比較的高いと言われています。
【もやもや病外来】 | |
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受付日時 | 毎週火曜日 14時〜17時 |
担当医師 | 堀 聡 |
もやもや病とは?
脳に血液を送る主要な血管(内径動脈の終末部やその分枝)に狭窄や閉塞が進行性に生じる病気です。その結果、脳血流が不足し、これを補うために脆弱な細い血管網(もやもや血管)が発達することが特徴で、この血管が画像で「もやもや」と煙のように見えることから、「もやもや病」と呼ばれています。日本人が名付けた病気です。

原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な要因が関与していることが知られています。また、もやもや病はアジア人に多く、日本では比較的頻度が高い病気といえます。
もやもや病の特徴的な点
- 小児でも成人でも発症する。
もやもや病の発症には、小児期(5-10歳)と成人期(30-40歳)の2つのピークがあります。 - 虚血型と出血型がある。
脳血流の不足を反映して脳虚血の発作(一過性脳虚血発作)や脳梗塞を起こす場合と、脳血流不足を補うために発達したもやもや血管の負担が大きくなって脳出血を起こす場合があります。 - 小児のほとんどは虚血、成人は虚血と出血が半々
小児では楽器を吹いたり、ラーメンを“フーフー”したり、大きな呼吸を繰り返し行う「過呼吸」により脳虚血が誘発されることが多く、それを契機に病院を受診するケースが少なくありません。成人では、脳血流不足を補うべく発達した細い血管に負荷がかかりすぎて出血を起こすことがあります。成人の約半数が脳出血で発症します。 - その他
頭痛やけいれん、不随意運動、高次脳機能障害で発症することもあります。また、無症状で偶然発見されることもあります。
診断
以下のような検査を実施して診断します。
- 脳血管撮影:カテーテルを用いた検査で、詳細に血管の状態がわかります。診断方法としてはゴールドスタンダードです。
- MRI/MRA:主要な血管の狭窄や、もやもや血管の有無を調べます。
- 脳血流SPECT/PET:脳血流がどれくらい低下しているのかを調べます。
治療
- 脳虚血や脳出血など、何らかの症状を認めた場合(症候性)は、不足している脳血流を補うべく、下記のような外科的手術(バイパス術)が検討されます。
直接バイパス術:頭皮の血管(浅側頭動脈)と脳表の血管(中大脳動脈)を直接つないで、直ちに血流を増やすことができる手術です。顕微鏡下で1mm前後の血管をつなぐ手術のため、高度な技術が要求されます。
間接バイパス術:頭蓋骨を覆う筋肉(側頭筋)や骨膜、脳を覆っている膜(硬膜)といった組織を脳表に敷いて接着させます。これらの組織から数ヶ月かけて脳表に向かって新しい血管が発生し、脳血流が増えることが期待できます。小児では、ほぼ全例で十分な血流増加を認める一方で、成人の30-40%では有効な血流増加が期待できないと言われています。
複合バイパス術:上記のバイパス術を組み合わせた方法です。当院では、原則この手術方法を採用しています。
また、出血を予防するための血圧管理や、虚血を予防するための血液サラサラの薬を使用することもありますが、その予防効果には限界があると考えられます。 - 偶然発見された場合(無症候性)の治療方針は確立されておらず、原則経過観察の方針となることが多いです。しかしながら、近年無症候性のもやもや病の予後に関する研究結果が報告され、虚血や出血を起こす確率や、起こしやすい特徴などが示され、今後、治療方針が確立するかもしれません。
担当医のもやもや病に関する主な論文・業績
Hori S, Miyata Y, Takagi R, Shimohigoshi W, Nakamura T, Akimoto T, Suenega J, Nakai Y, Kawasaki T, Sakata K, Yamamoto T. Preoperative collateralization depending on posterior components in the prediction of transient neurological events in moyamoya disease. Neurosurg Rev, 47(1):781, 2024.
Hori S, Kashiwazaki D, Yamamoto S, Acker G, Czabanka M, Akioka N, Kuwayama N, Vajkoczy P, Kuroda S. Impact of Interethnic Difference of Collateral Angioarchitectures on Prevalence of Hemorrhagic Stroke in Moyamoya Disease. Neurosurgery, 85(1):134-146, 2019.
Hori S, Acker G, Vajkoczy P. Radial Artery Grafts as Rescue Strategy for Patients with Moyamoya Disease for Whom Conventional Revascularization Failed. World Neurosurg, 85:77-84, 2016.
Hori S, Kashiwazaki D, Akioka N, Hayashi T, Hori E, Umemura K, Horie Y, Kuroda S. Surgical anatomy and preservation of the middle meningeal artery during bypass surgery for moyamoya disease. Acta Neurochir (Wien), 157(1):29-36, 2015.
Hori S, Kashiwazaki D, Akioka N, Hamada H, Kuwayama N, Kuroda S. Repeat bypass surgery for intracranial hemorrhage 30 years after indirect bypass for moyamoya disease. No Shinkei Geka, 42(4):347-353, 2014.
堀 聡: 第11回手技にこだわる脳神経外科ビデオカンファレンス 優秀演題賞. もやもや病手術におけるMMA走行の解剖理解に基づく温存法の重要性, 2024.
最後に
もやもや病は難病指定されている非常に稀な病気であり、診断自体が容易ではなく、上記のような特徴も認知度が低いのが現状です。当院では豊富な経験を持つ医師が担当し、診断から治療、その後までのご相談に乗りますので、安心して受診してください。
三叉神経痛・顔面けいれんについて
三叉神経痛と顔面けいれんは、いずれも顔面の神経に関連する病気で、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。どちらも脳の血管と神経の接触(神経血管圧迫)が原因となることが多く、適切な治療で症状を大きく改善することができます。
三叉神経痛とは?
三叉神経は、顔面の感覚をつかさどる神経で、額・頬・あごに分布しています。三叉神経痛は、顔の片側に電気が走るような激しく鋭い痛みが発作的に起こる病気です。この痛みは、「現れたり消失したり」を繰り返します。歯磨き、洗顔、食事などの刺激で誘発されることが多いです。
原因
多くは脳の血管が三叉神経に触れて圧迫することによって生じます(神経血管圧迫)。まれに脳腫瘍や多発性硬化症など、他の疾患が原因となることもあります。
治療
- 薬物療法
三叉神経痛に対しては、カルバマゼピンなどの抗てんかん薬が著効することが多いため、まずは薬での治療が選択されます。一方で、眠気や肝障害などの副作用が強く出ることがあります。 - 手術
微小血管減圧術(MVD):薬が効かなくなった場合や副作用が強い場合、全身麻酔で開頭手術を行い、頭蓋内の血管による神経圧迫を外科的に解除します。多くの方(約90%)で劇的に症状が改善します。
顔面けいれんとは?
顔面神経は、顔の筋肉を動かす神経です。顔面けいれんは、顔の片側の筋肉が勝手にピクピクとけいれんする病気です。具体的には、最初はまぶたのけいれんから始まり、次第に口元や頬に広がります。これは、意識とは無関係に起こり、自分では止められません。また、睡眠中は症状が軽くなることが多いです。
原因
多くの場合、脳内の血管が顔面神経に触れて圧迫することで起こります(神経血管圧迫)。稀に脳腫瘍や脳血管異常が原因となることもあります。
治療
- 薬物療法
顔面けいれんに対しても、クロナゼパムなどの抗てんかん薬が用いられますが、三叉神経痛に対する薬物治療ほどの有効な効果は得られないことが多いです。 - ボツリヌス毒素注射(ボトックス治療)
けいれんを起こす筋肉に注射します。比較的安全で有効性の高い治療です。一方で、根本的な治療ではないため、効果の持続は約3〜4か月で、定期的な注射が必要です。回数を重ねるごとに効果が弱くなることもあります。注射を繰り返していると、まぶたが垂れてしまったり、口元に歪みが生じたりして、表情の左右差が目立つことがあります。 - 手術
微小血管減圧術(MVD):全身麻酔で開頭手術を行い、頭蓋内の血管による神経圧迫を外科的に解除します。多くの方(約90%)で劇的に症状が改善します。
当院の治療体制
当院では、三叉神経痛や顔面けいれんに対し、脳神経外科・神経内科・放射線科が連携し、診断から治療まで一貫した対応を行っております。手術が必要な場合も、日本有数の施設で訓練を受け、十分に経験を積んだ医師が担当いたします。お悩みの症状がある場合は、早めにご相談ください。
実績
入院について
令和5年度の実績(件数) | |
総入院患者数 | 338 |
脳梗塞 | 121 |
非外傷性硬膜下血腫 | 83 |
脳血管障害 | 29 |
外傷性硬膜下血腫 | 17 |
てんかん | 13 |
頭蓋・頭蓋内損傷 | 13 |
脳腫瘍 | 12 |
未破裂脳動脈瘤 | 12 |
くも膜下出血、破裂脳動脈瘤 | 8 |
一過性脳虚血発作 | 4 |
水頭症 | 4 |
その他の脳障害 | 13 |
その他 | 9 |
手術件数について
令和5年度の実績(件数) | |
総手術件数 | 153 |
慢性硬膜下血腫穿孔洗浄術 | 32 |
経皮的頸動脈ステント留置術 | 7 |
水頭症手術(シャント手術) | 6 |
動脈血栓内膜摘出術(内頸動脈) | 6 |
脊髄刺激装置植込術(脊髄刺激電極を留置) | 6 |
経皮的脳血栓回収術 | 5 |
頭蓋内腫瘍摘出術(その他) | 5 |
脳動脈瘤頸部クリッピング(1箇所) | 4 |
胃瘻造設術 | 3 |
気管切開術 | 2 |
血管塞栓術 | 2 |
その他 | 75 |
脳血管内治療について
令和5年度の実績(件数) | |
総脳血管内治療件数 | 34 |
経皮的頸動脈ステント留置術 | 7 |
経皮的脳血栓回収術 | 5 |
経皮的選択的脳血栓・塞栓溶解術(頭蓋内脳血管) | 0 |
脳血管内手術(1箇所) | 1 |
その他 | 21 |
総カテーテル件数 | 106 |
採用情報
採用情報についてはこちらからご確認ください。
外来診療予定表
6月 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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初診 | 朴 穂貞 | 下吹越 航 | 交代制 | 青柳 盟史 | 堀 聡 | 交代制 |
再診 (予約制) | 東島 威史 | 下吹越 航 | 青柳 盟史 | 堀 聡 | ||
専門外来 (予約制) | もやもや病外来 (午後) | ふるえ外来 (午後) (第2,4週) |
スタッフ紹介

脳神経外科部長
堀 聡
主な担当
脳卒中の外科、もやもや病、脳血管内治療、三叉神経痛、顔面けいれん
専門分野、資格など
医学博士、日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医、日本脳卒中学会脳卒中専門医・指導医、日本脳卒中の外科学会技術認定医、日本脳神経血管内治療学会脳神経血管内治療専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医

脳神経外科副部長
青栁 盟史
主な担当
脳神経外科全般
専門分野、資格など
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、
日本脳神経血管内治療学会脳神経血管内治療専門医

脳神経外科第二科長
東島 威史
主な担当
てんかん、本態性振戦、パーキンソン病、不随意運動、難治性疼痛
専門分野、資格など
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医、日本てんかん学会てんかん専門医、
機能的定位脳手術技術認定医、スポーツドクター

脳神経外科医師
下吹越 航
主な担当
脳神経外科全般、脳血管内治療
専門分野、資格など
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医、
日本脳神経血管内治療学会脳神経血管内治療専門医

脳神経外科医師
朴 穂貞
主な担当
脳神経外科全般
専門分野、資格など
産業医

脳神経外科非常勤医師
横浜市立大学脳神経外科 主任教授
山本 哲哉
主な担当
脳神経外科全般
患者さんのご紹介について
地域医療連携室では、紹介患者さんの診察予約を行っております。
詳しくは下記よりご確認ください。